◇先週火曜日、前記テーマでのセミナーを受講した。同協会の性格上、通常、そのセミナー内容は不正対策に関連したものとなってくるが、今回は不正と知的財産法のコラボレーションとなっている。
◇今回講師の久保次三教授は、日産の久保さんの時代から知財業界でよく知られていたが、世界知的所有権機関(WIPO)のコンサルタントを始めた時には皆驚かされ、また、鹿児島大学へ教授として赴任した時には突如東京から消え去り皆驚かされ、5年経って再び東京に現れた時には専修大学の教授になっていた。その都度、面白い話題を提供してくれていたが、今回もそれに違わず面白いセミナー内容のご提供をいただいた。
不正と知的財産法のコラボ、これに対峙したものは中々いないであろうが、今回久保教授の用意した内容は、職務発明と営業秘密の事例を中心としたもので、多くの問題点が提起され、注目を集めているところでもある。
◇初めの40分ほどで知的財産法を概観し、とはいっても、特許法、実用新案法、意匠法、商標法、種苗法、著作権法、半導体チップ法、不正競争防止法等、セミナーという時間的制限の中では、後の理解に役立つ体系的理解のための多くの図表を参照し、ポイントとなる点を説明いただいた。
最初に、物と情報の比較で、「物→所有権→占有・所有」、「情報→財産権→専有・保有」との説明は、知的財産全般に通ずる性質だけでなく、本題の営業秘密等にも通ずる自由に拡散し得る宿命的な知的財産の性質を示唆したものともみえた。
◇本題となる「職務発明をめぐる特許を受ける権利の帰属と営業秘密の保護」では、「バリ取りホルダー(加工工具)事件(東京地判平21.1.29、知財高判平22.2.24、最決平22.9.24(上告棄却・上告不受理))」を取り上げ、所感も交え、重要ポイントを説明いただいた。
平成17年4月1日施行の改正特許法35条(職務発明)については、1項「法定通常実施権」変更なし、2項「予約承継」実質的な変更なし、3項「相当の対価の支払」実質的な変更なし、4項「不合理な対価でないこと」新設、5項「使用者の貢献度等」新設、旧4項に相当というポイントが明示され今物議を醸し出している35条の条文が掲載されている。
◇特許法35条の改正は、テキストで取上げられた「オリンパス光学事件(最三小判平15.4.22)の判決を契機として産業界から改正を要望する声が上がったとされている。
久保教授がセミナー中に触れていた「青色発光ダイオード」の事件については、日亜化学工業に勤務していた中村修二氏の報奨金はわずか2万円で、同社退職後、カリフォルニア大教授の中村氏は同社に対し、発明の対価の一部として200億円の支払いを求めていた裁判の控訴審で平成17年1月11日、中村教授と同社との和解が東京高裁で成立し、同社が中村教授に8億4391万円を支払うこととなり大きな話題となった事件である。
この頃、技術者たちが特許法35条に基づき、退職前の会社を訴えるケースが多発してきていたわけで、在職中は不満を抑えて、退職後に訴訟を提起するというかたちになっている。
このような事件の影響もあり、特許の報酬が少なく、発明した技術者が報われる制度をということで、改正された特許法35条であるが、これにより、職務発明にかかわるリスクが会社経営に大きな影響を与えるという認識がトップに芽生えてきたという話も聞かれる。
しかし、この改正特許法35条も産業界の要望に応えていないなど、経団連からも再改定の声があがってきているということである。
◇営業秘密については、久保教授もテキスト所感において、「(前の職場での)残留知識を闇雲に単に使わせず埋もれさせることは、社会全体の進歩に害をもたらすことにもなろう。だからといって、前の職場が多大の時間・コストを掛けて修得させた知識・経験が、そのままライバル会社で使用されることを座視するわけにもいかない。」と述べ、「会社としては、退職者、そして、中途採用者の双方のことをバランスよく考えれば、最早「情報は必ず漏れるもの」という意識で取り組むしかない時代が到来したということかもしれない。言い過ぎかもしれないが、情報の本質を考えると悩ましい。」と述べている。
考えてみれば、特殊で高度な技術を持った者であれば尚更、退職した場合に同業他社であるライバル会社へ行く可能性が高くなっていく。終身雇用制が崩れ出し、人の入れ替わりが激しくなってくると、この問題も今後更に顕在化してくるのではないか。
◇セミナー全体での論点を含んだ重要ポイントを全て紹介するわけにもいかず、ここでは、一部を紹介するに止まるが、会社関係者は、関連する法令の理解だけでなく、法律の規制だけで解決されない部分にも注意を行き届かせる細心のリスク管理が今後益々必要となってくるであろうと感じたところである。
◇セミナー終了後には、法務部、知財部や特許事務所弁理士の数名の方々から、メール等で、セミナーが大変役立った等の内容でのお礼の言葉が届き、本当に良かったと思えたのであるが、今後は、知財関係部署も一体となって不正・リスク管理に取り組むことも必要となるのかもしれない。
(當間)
意匠・パテント・TM(トレードマーク)等、知的財産にまつわるニュースの話
2013年2月25日月曜日
2012年12月6日木曜日
知的財産権法における不正、商標法の場合
◇知的財産権法における不正の問題、これは、特許法、実用新案法、意匠法、商標法、不正競争防止法、著作権法その他法上幅広く多くの問題が存在する。実際、各知的財産権の侵害、違法コピー、営業秘密等情報漏洩その他多くの問題が思い浮かぶところである。
その中で公益性の強いとされる商標法の場合をみてみたい。
◇まず商標権の侵害については、その公益性の強さからも非親告罪となっているとされていたが、被害者の告訴がなくとも検察官は公訴を提起できてしまう。なお、特許権の侵害については、昔は親告罪であったが、改正により非親告罪となっており、この点でも刑事罰は強化されてきているとみられる。
◇また、よく見かける(R)(○の中にR、マルアール)は、登録商標(registered trademark)の表示であり、TMは商品商標(trademark)、SMは役務商標(service mark)の表示で未登録商標に使用される。これらの表示は、もともと米国で使われたりしているものであるが、特に(R)は、日本でもよく見かける。しかし、日本では、登録商標を付するときは、その商標にその商標が登録商標である旨の表示(以下「商標登録表示」という。)を付するように努めなければならない(商標法73条)とあるようにこれは訓示規定であり、必ずそうしなければならないというものでもない。そして、商標登録表示の具体的方法は、登録商標の文字及びその登録番号又は国際登録番号とされている(同法施行規則17条)ので、それに従えば「登録商標第○○○○○号」というような表示となる。
◇では、このような表示が虚偽表示の場合はどうなるのか。登録されていないのに登録表示や紛らわしい表示をすることは禁止されている(同法74条)し、刑事罰の適用(3年以下の懲役又は300万円以下の罰金)もある(同法80条)。そして、従業者が会社の業務に関して虚偽表示の規定に違反した場合には、行為者を罰するほか、その法人に対しても罰金刑(一億円以下の罰金刑)が科されることになる(同法82条)というように両罰規定で厳しいものとなっている。なお、たまに特許庁に出願されたデータで見かけることがあるが、登録前に予め(R)を付けて出願されているものがある。不謹慎とは思いつつ『これじゃ、虚偽表示ではないか」と思えて笑ってしまうこともある。
◇そして、商標権者の不正使用による取消審判(同法51条)や使用権者(ライセンシー)による不正使用(同法53条)の規定が存在し、商標登録が取消審判により取り消される場合がある。これらは、不正な使用により誤認混同を生じさせた場合に需要者の利益が害されるため規定されているとみられるが、制裁的色彩が強いものとなっている。
◇このように商標法の場合を概観しただけでも、いくつもの厳しい規定があるが、知的財産権法における不正の諸問題については、予め知識としてまとめておかないと、いきなり犯罪者として処罰されることもあり得るのである。「法の不知」で処罰は逃れられないというような言葉も刑法ではあったはずであるが、法を知らなかったではすまないのである。
◇来年には不正と知財を絡めたセミナーがACFE Japan主催で開催される予定であるが、専門家からのまとまった知識を吸収する良い機会とも思われる。(當間)
その中で公益性の強いとされる商標法の場合をみてみたい。
◇まず商標権の侵害については、その公益性の強さからも非親告罪となっているとされていたが、被害者の告訴がなくとも検察官は公訴を提起できてしまう。なお、特許権の侵害については、昔は親告罪であったが、改正により非親告罪となっており、この点でも刑事罰は強化されてきているとみられる。
◇また、よく見かける(R)(○の中にR、マルアール)は、登録商標(registered trademark)の表示であり、TMは商品商標(trademark)、SMは役務商標(service mark)の表示で未登録商標に使用される。これらの表示は、もともと米国で使われたりしているものであるが、特に(R)は、日本でもよく見かける。しかし、日本では、登録商標を付するときは、その商標にその商標が登録商標である旨の表示(以下「商標登録表示」という。)を付するように努めなければならない(商標法73条)とあるようにこれは訓示規定であり、必ずそうしなければならないというものでもない。そして、商標登録表示の具体的方法は、登録商標の文字及びその登録番号又は国際登録番号とされている(同法施行規則17条)ので、それに従えば「登録商標第○○○○○号」というような表示となる。
◇では、このような表示が虚偽表示の場合はどうなるのか。登録されていないのに登録表示や紛らわしい表示をすることは禁止されている(同法74条)し、刑事罰の適用(3年以下の懲役又は300万円以下の罰金)もある(同法80条)。そして、従業者が会社の業務に関して虚偽表示の規定に違反した場合には、行為者を罰するほか、その法人に対しても罰金刑(一億円以下の罰金刑)が科されることになる(同法82条)というように両罰規定で厳しいものとなっている。なお、たまに特許庁に出願されたデータで見かけることがあるが、登録前に予め(R)を付けて出願されているものがある。不謹慎とは思いつつ『これじゃ、虚偽表示ではないか」と思えて笑ってしまうこともある。
◇そして、商標権者の不正使用による取消審判(同法51条)や使用権者(ライセンシー)による不正使用(同法53条)の規定が存在し、商標登録が取消審判により取り消される場合がある。これらは、不正な使用により誤認混同を生じさせた場合に需要者の利益が害されるため規定されているとみられるが、制裁的色彩が強いものとなっている。
◇このように商標法の場合を概観しただけでも、いくつもの厳しい規定があるが、知的財産権法における不正の諸問題については、予め知識としてまとめておかないと、いきなり犯罪者として処罰されることもあり得るのである。「法の不知」で処罰は逃れられないというような言葉も刑法ではあったはずであるが、法を知らなかったではすまないのである。
◇来年には不正と知財を絡めたセミナーがACFE Japan主催で開催される予定であるが、専門家からのまとまった知識を吸収する良い機会とも思われる。(當間)
2012年11月1日木曜日
商標使用状況調査
◇日頃から商標使用状況調査と称し、商標の不使用による『取消審判』に備えた、商標の使用/不使用の事実を解明する本格的な調査サービスを行なっている。
◇既にご存知の方も多いと思うが商標の不使用による『取消審判』とは、商標を使用していないことを理由に他人の商標登録を取り消す手続きである。
◇商標の権利者が過去3年間日本国内で登録にかかる商標が指定商品若しくは指定役務(サービス)について使用されていない場合、誰でも不使用取消審判を特許庁に請求することが可能であり、審判が通れば、その商標全体か、もしくは指定商品、指定役務の一部が消滅することになる。
◇ただし、当然、権利者が答弁(反論)する機会も設けられており、答弁が受け入れられれば、その商標権は存続しつづけることになる。ここで言う権利者の答弁とは、3年以内に商標を使用していることを証明する写真、カタログ、請求書、納品書等の証拠品を提出することであり、期日までに答弁をしなければ、請求した範囲の商標権は、取り消されることになるという仕組みとなっている。取消す目的は、その商標が妨げになっていて請求人が出願しようとしている商標が登録出来ないということが最も多いであろう。
◇それでは、何故に本格的な使用状況調査が必要なのであろうか。
◇まず第一に、インターネットや公開情報をリサーチしただけでは、商標権者が使用を許諾しているライセンシー(使用権者)の使用状況までは把握できないことなど、表面化していないものは判らないということ。
※クライアント側で行ったインターネットや公開情報のリサーチでは使用が確認されなかった商標でも、ディークエストの実施する本格的な商標使用状況調査によって、使用が確認されたものは、全体の40パーセント以上におよんでいる。
◇第ニに、本格的な使用状況調査によって、権利者の詳細な使用状況が確認されるため、譲渡交渉やライセンス交渉を有利に展開することが可能となること。表面的な調査しかしなかったことが原因で取り消しが出来なかった場合、『取消審判を請求された』という権利者の感情に触れるような事実だけが残るため、権利者との間で心情的な部分で摩擦が生じ、その後の譲渡交渉やライセンス交渉の妨げになる恐れが大きい。
◇何れにしても、権利者にとっては大切な商標権であることを十分に考慮しながら、慎重な対応をする必要があり、専門家である経験豊かな弁理士に相談するのも一つの方策といえる。(山本)
◇既にご存知の方も多いと思うが商標の不使用による『取消審判』とは、商標を使用していないことを理由に他人の商標登録を取り消す手続きである。
◇商標の権利者が過去3年間日本国内で登録にかかる商標が指定商品若しくは指定役務(サービス)について使用されていない場合、誰でも不使用取消審判を特許庁に請求することが可能であり、審判が通れば、その商標全体か、もしくは指定商品、指定役務の一部が消滅することになる。
◇ただし、当然、権利者が答弁(反論)する機会も設けられており、答弁が受け入れられれば、その商標権は存続しつづけることになる。ここで言う権利者の答弁とは、3年以内に商標を使用していることを証明する写真、カタログ、請求書、納品書等の証拠品を提出することであり、期日までに答弁をしなければ、請求した範囲の商標権は、取り消されることになるという仕組みとなっている。取消す目的は、その商標が妨げになっていて請求人が出願しようとしている商標が登録出来ないということが最も多いであろう。
◇それでは、何故に本格的な使用状況調査が必要なのであろうか。
◇まず第一に、インターネットや公開情報をリサーチしただけでは、商標権者が使用を許諾しているライセンシー(使用権者)の使用状況までは把握できないことなど、表面化していないものは判らないということ。
※クライアント側で行ったインターネットや公開情報のリサーチでは使用が確認されなかった商標でも、ディークエストの実施する本格的な商標使用状況調査によって、使用が確認されたものは、全体の40パーセント以上におよんでいる。
◇第ニに、本格的な使用状況調査によって、権利者の詳細な使用状況が確認されるため、譲渡交渉やライセンス交渉を有利に展開することが可能となること。表面的な調査しかしなかったことが原因で取り消しが出来なかった場合、『取消審判を請求された』という権利者の感情に触れるような事実だけが残るため、権利者との間で心情的な部分で摩擦が生じ、その後の譲渡交渉やライセンス交渉の妨げになる恐れが大きい。
◇何れにしても、権利者にとっては大切な商標権であることを十分に考慮しながら、慎重な対応をする必要があり、専門家である経験豊かな弁理士に相談するのも一つの方策といえる。(山本)
2012年10月4日木曜日
商標の拒絶理由
◇商標登録出願については、出願すればそのまま登録になるというものではない。出願の実体面についても特許庁審査官により審査され、拒絶の理由が発見されると、拒絶理由通知が出願人に発送される。商標の場合は40日間の期間が指定され意見書提出の機会が与えられる。いきなり審査の最終的な判断である拒絶査定はできず、まずは意見を申し述べる機会が与えられているのは、商標法条約でも述べるところである。この期間内であれば1回だけでなく、2回、3回と意見書を提出してもよいと考えられるが、あまりそのような事例は聞かない。
◇審査官の実体審査では、先ず、商標法3条の識別力といわれるものをみて、その後、同法4条をみるのが、建前となっているというか、理論的には本当は逆はあり得ない。なぜかというと第3条でみるのが出願されたものが商標として認められるかという最も根本的な部分であり、それを通り越して、4条1項11号の先登録の同一・類似の商標であるか否かの審査にいきなり行くのは、商標とは認められないものについて、商標の類似を判断してもナンセンスといえるわけである。しかし、実際には、4条の同一類似があった場合は、3条の商標と認められるか否かの判断より、4条1項11号の拒絶理由の方が出しやすいので、審査が逆になることはある。
◇では、この商標として認められるか否か、3条1項に何があるのかというと、1号商品・役務の普通名称、2号商品・役務の慣用商標、3号商品・役務の品質表示等の記述的商標、4号ありふれた氏・名称、5号極めて簡単で、かつ、ありふれたもの、6号前号までの他、識別力ないもの
が規定されている。
◇1号は、例えば、「時計」という商品に「時計」と表示したとしてもだめで、非常に分かりやすいためかそのような出願はあまりみない。
拒絶理由で一番多いのは、3号である。これは、その商品がどのようなものか商標から感じ取れれば、消費者も購入しやすいし、また覚えやすくリピートもしやすいので、企業が品質等表示の拒絶ぎりぎりを狙って出願してくるのである。例えば、「自動車」という商品に「(デザイン化されていない)デラックス」という品質表示が仮に登録になったとしたら、それは非常に価値の高いものであり、登録になった国で唯一その商標権者(厳密にはライセンシーも)のみが自動車に「デラックス」という商標を使えるということになる。このような表示を一個人や企業に独占させるのは社会的影響も大きいので、通常は拒絶になる。
◇ついでにいうと、商標の価値評価算定は、特許より難しいといわれる(商標は、商標権者が変わると価値が変動するが、特許は特許権者が変わっても同様の価値を維持し得るためだと思われる)が、私は、造語商標という識別力の強い(strong mark)と品質等表示ぎりぎりで登録となった(weak mark)が両極端であるがそれぞれ価値の高いものと考えるのである。多くの企業が狙うのは品質等表示ぎりぎりのいかにも拒絶になりそうな商標である。
◇それと、この3条1項3号と4条1項16号の抱き合わせの拒絶理由もかなり多く、忘れてはならない重要なものである。4条1項16号は、商品の品質又は役務の質の誤認について規定する。例えば、商品「シャンプー」に「たまごシャンプー」という商標では、本当にたまご入りのシャンプーであれば3条1項3号の原材料の表示にもなり得るし、また、たまごの入っていないシャンプーであれば4条1項16号の商品の品質の誤認を生じるおそれもあるのであり、抱き合わせで拒絶理由となり得るのである。また16号についていえば、例えば、指定商品「洋服」に「イギリス」という文字を含んだ商標では、イギリス製以外の洋服には品質の誤認を生じるおそれがあるが、このような場合、指定商品の記載を「イギリス製の洋服」と権利範囲を狭める減縮補正をすれば拒絶理由は解消することになる。(當間)
◇審査官の実体審査では、先ず、商標法3条の識別力といわれるものをみて、その後、同法4条をみるのが、建前となっているというか、理論的には本当は逆はあり得ない。なぜかというと第3条でみるのが出願されたものが商標として認められるかという最も根本的な部分であり、それを通り越して、4条1項11号の先登録の同一・類似の商標であるか否かの審査にいきなり行くのは、商標とは認められないものについて、商標の類似を判断してもナンセンスといえるわけである。しかし、実際には、4条の同一類似があった場合は、3条の商標と認められるか否かの判断より、4条1項11号の拒絶理由の方が出しやすいので、審査が逆になることはある。
◇では、この商標として認められるか否か、3条1項に何があるのかというと、1号商品・役務の普通名称、2号商品・役務の慣用商標、3号商品・役務の品質表示等の記述的商標、4号ありふれた氏・名称、5号極めて簡単で、かつ、ありふれたもの、6号前号までの他、識別力ないもの
が規定されている。
◇1号は、例えば、「時計」という商品に「時計」と表示したとしてもだめで、非常に分かりやすいためかそのような出願はあまりみない。
拒絶理由で一番多いのは、3号である。これは、その商品がどのようなものか商標から感じ取れれば、消費者も購入しやすいし、また覚えやすくリピートもしやすいので、企業が品質等表示の拒絶ぎりぎりを狙って出願してくるのである。例えば、「自動車」という商品に「(デザイン化されていない)デラックス」という品質表示が仮に登録になったとしたら、それは非常に価値の高いものであり、登録になった国で唯一その商標権者(厳密にはライセンシーも)のみが自動車に「デラックス」という商標を使えるということになる。このような表示を一個人や企業に独占させるのは社会的影響も大きいので、通常は拒絶になる。
◇ついでにいうと、商標の価値評価算定は、特許より難しいといわれる(商標は、商標権者が変わると価値が変動するが、特許は特許権者が変わっても同様の価値を維持し得るためだと思われる)が、私は、造語商標という識別力の強い(strong mark)と品質等表示ぎりぎりで登録となった(weak mark)が両極端であるがそれぞれ価値の高いものと考えるのである。多くの企業が狙うのは品質等表示ぎりぎりのいかにも拒絶になりそうな商標である。
◇それと、この3条1項3号と4条1項16号の抱き合わせの拒絶理由もかなり多く、忘れてはならない重要なものである。4条1項16号は、商品の品質又は役務の質の誤認について規定する。例えば、商品「シャンプー」に「たまごシャンプー」という商標では、本当にたまご入りのシャンプーであれば3条1項3号の原材料の表示にもなり得るし、また、たまごの入っていないシャンプーであれば4条1項16号の商品の品質の誤認を生じるおそれもあるのであり、抱き合わせで拒絶理由となり得るのである。また16号についていえば、例えば、指定商品「洋服」に「イギリス」という文字を含んだ商標では、イギリス製以外の洋服には品質の誤認を生じるおそれがあるが、このような場合、指定商品の記載を「イギリス製の洋服」と権利範囲を狭める減縮補正をすれば拒絶理由は解消することになる。(當間)
2012年8月10日金曜日
商標の品質保証機能
◇商標には、一般に出所表示機能、品質保証機能、宣伝広告機能があるとされているが、これら以外にも、ブランド・イメージの情報交換を担う機能としてコミュニケーション機能も注目を集めたりする。
◇しかし、どのような商標でも同様にこれら全ての機能を発揮するとは限らないのである。品質保証機能に特化した商標が存在し、その代表例として所謂ウールマークが挙げられる。
現時点で現存するウールマーク図形については、出願人/権利者「アイダブリューエス・ノミニー・コンパニー・リミテッド」or「アイ・ダブリュー・エス ノミニー カンパニー リミテッド」で検索すると、27件存在する。その指定商品はというと「毛織物、毛メリヤス生地、その他の羊毛を材料として成る布地」や「毛糸」等の羊毛を意識したものが含まれている。
そして実際の使用はというと、よく見かけるように衣服のタグ等にこのウールマークを表示して、他社の製造した衣服の品質保証をしているわけである。つまり製造した企業を示す出所表示機能を果たす商標は別途衣服に付され、更にウールマークも併せて付して使用しているわけである。ここでウールマークは、出所表示機能を果たしてしまうと現実の製造者と間違ってしまう可能性があるので、専ら品質保証機能に特化して機能を発揮しなければならない。ウールマークの場合は著名であるので使用状態から逆に実際にはどのような機能を果たしているか推測できるが、出願された事項、公報、原簿からこれらは読み取れない。
出願された事項等から、品質保証機能に特化して使用されるのか判別がつかない商標も、実際の使用(又は使用がなくとも出願人の出願時の意図)では、品質保証機能に特化したものがかなり存在するかもしれない。一方、使用については、商標法2条1項1号の使用の定義に「証明」があり、これらも商標としての使用にあたるということになるはずである。
◇そして、時代の変遷とともに幾つかの特徴ある商標が散見されるようになってきた。
下記の商標のように商標見本の中に「証明」「認定」「認証」等の何らかの品質保証を表す文言を明記するものや、役務商標(サービスマーク、下記⑤、⑥、⑦、⑧)であれば指定役務の記載中にも「証明」「認定」「認証」の文言が明記され、出願された事項、公報、原簿からも品質保証機能を発揮させるための商標というのが判別できるのである。
この中で、佐賀県の④・⑨、有田市の⑧、長野県の⑩については、EUにおける地理的表示・原産地称呼の制度(ワイン、チーズ他、品質等厳しく審査され登録される)に似た制度(RUと違い地方公共団体レベルと規模が小さい等相違点は幾つかある)とみられるものであるが、いずれも商標登録制度を利用してきている点で同様の動きを見せており注目される。
このように、品質保証機能を期待する場合には、商標の使用の定義に「証明」もあり、通常の商標登録出願が行われてきているとみられるが、更に注目すべきは我が国でも証明商標制度の導入の検討もなされているのである。
①登録第4256267号商標「かごしま黒豚証明書\この豚肉は、鹿児島県黒豚生産者協議会会員の生産したものです。∞鹿児島県黒豚生産者協議会」、指定商品「豚肉,豚肉製品」
②登録第4615351号商標「§小野田\あさり∞小野田\漁協\認定印∞小野田漁業協同組合」、指定商品「あさり」
③登録第4786671号商標「秋田県\認証∞比内地鶏」、指定商品「比内地鶏の肉」
④登録第4910865号商標「佐賀県原産地呼称\管理委員会\認定」、指定商品「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」
⑤登録第5242090号商標「HACCP対応菓子製品高度化基準認定∞HACCP∞この商品は国の指定機関になって\いる、全菓連が行う「菓子製品の\高度化基準の認定(00-00号)」を\受けた工場で製造したものです。」、指定役務「商品の品質又は役務の質の認定基準への適合性についての審査・認定又は証明」
⑥登録第5378466号商標「§千曲∞信州千曲\ブランド\認定品」、指定役務「長野県千曲市産の飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」
⑦登録第5253555号商標「産地証明検査機構∞検査」、指定役務「木材の産地・品質についての検査・証明・認定,石材の産地・品質についての検査・証明・認定,土木に関する試験又は研究,魚介類の産地・品質についての検査・証明・認定,農産物の産地・品質についての検査・証明・認定,農業・畜産又は水産に関する試験・検査又は研究及びこれらに関する助言・指導又は情報の提供」
⑧登録第5446667号商標「「有田市原産地呼称管理委員会認定」\「有田モデル認定品」\「Arida Appellation Control」∞有田QUALITY\有田市原産地呼称管理委員会 認定」、指定役務「農産物等の商品の品質の認定基準への適合性についての審査・認定又は証明」
⑨登録第5505517号商標「§The∞SAGA\佐賀県原産地呼称管理委員会認定」、指定商品「佐賀県産の日本酒,佐賀県産の洋酒,佐賀県産の果実酒,佐賀県産の酎ハイ,佐賀県産の中国酒,佐賀県産の薬味酒」
⑩商願2012-18543商標「長野県\原産地呼称\管理委員会\・認定・」、指定商品「長野県産の米 長野県産の原料を使って長野県内で製造されたワイン,日本酒,焼酎,シードル」
(當間)
◇しかし、どのような商標でも同様にこれら全ての機能を発揮するとは限らないのである。品質保証機能に特化した商標が存在し、その代表例として所謂ウールマークが挙げられる。
現時点で現存するウールマーク図形については、出願人/権利者「アイダブリューエス・ノミニー・コンパニー・リミテッド」or「アイ・ダブリュー・エス ノミニー カンパニー リミテッド」で検索すると、27件存在する。その指定商品はというと「毛織物、毛メリヤス生地、その他の羊毛を材料として成る布地」や「毛糸」等の羊毛を意識したものが含まれている。
そして実際の使用はというと、よく見かけるように衣服のタグ等にこのウールマークを表示して、他社の製造した衣服の品質保証をしているわけである。つまり製造した企業を示す出所表示機能を果たす商標は別途衣服に付され、更にウールマークも併せて付して使用しているわけである。ここでウールマークは、出所表示機能を果たしてしまうと現実の製造者と間違ってしまう可能性があるので、専ら品質保証機能に特化して機能を発揮しなければならない。ウールマークの場合は著名であるので使用状態から逆に実際にはどのような機能を果たしているか推測できるが、出願された事項、公報、原簿からこれらは読み取れない。
出願された事項等から、品質保証機能に特化して使用されるのか判別がつかない商標も、実際の使用(又は使用がなくとも出願人の出願時の意図)では、品質保証機能に特化したものがかなり存在するかもしれない。一方、使用については、商標法2条1項1号の使用の定義に「証明」があり、これらも商標としての使用にあたるということになるはずである。
◇そして、時代の変遷とともに幾つかの特徴ある商標が散見されるようになってきた。
下記の商標のように商標見本の中に「証明」「認定」「認証」等の何らかの品質保証を表す文言を明記するものや、役務商標(サービスマーク、下記⑤、⑥、⑦、⑧)であれば指定役務の記載中にも「証明」「認定」「認証」の文言が明記され、出願された事項、公報、原簿からも品質保証機能を発揮させるための商標というのが判別できるのである。
この中で、佐賀県の④・⑨、有田市の⑧、長野県の⑩については、EUにおける地理的表示・原産地称呼の制度(ワイン、チーズ他、品質等厳しく審査され登録される)に似た制度(RUと違い地方公共団体レベルと規模が小さい等相違点は幾つかある)とみられるものであるが、いずれも商標登録制度を利用してきている点で同様の動きを見せており注目される。
このように、品質保証機能を期待する場合には、商標の使用の定義に「証明」もあり、通常の商標登録出願が行われてきているとみられるが、更に注目すべきは我が国でも証明商標制度の導入の検討もなされているのである。
①登録第4256267号商標「かごしま黒豚証明書\この豚肉は、鹿児島県黒豚生産者協議会会員の生産したものです。∞鹿児島県黒豚生産者協議会」、指定商品「豚肉,豚肉製品」
②登録第4615351号商標「§小野田\あさり∞小野田\漁協\認定印∞小野田漁業協同組合」、指定商品「あさり」
③登録第4786671号商標「秋田県\認証∞比内地鶏」、指定商品「比内地鶏の肉」
④登録第4910865号商標「佐賀県原産地呼称\管理委員会\認定」、指定商品「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」
⑤登録第5242090号商標「HACCP対応菓子製品高度化基準認定∞HACCP∞この商品は国の指定機関になって\いる、全菓連が行う「菓子製品の\高度化基準の認定(00-00号)」を\受けた工場で製造したものです。」、指定役務「商品の品質又は役務の質の認定基準への適合性についての審査・認定又は証明」
⑥登録第5378466号商標「§千曲∞信州千曲\ブランド\認定品」、指定役務「長野県千曲市産の飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」
⑦登録第5253555号商標「産地証明検査機構∞検査」、指定役務「木材の産地・品質についての検査・証明・認定,石材の産地・品質についての検査・証明・認定,土木に関する試験又は研究,魚介類の産地・品質についての検査・証明・認定,農産物の産地・品質についての検査・証明・認定,農業・畜産又は水産に関する試験・検査又は研究及びこれらに関する助言・指導又は情報の提供」
⑧登録第5446667号商標「「有田市原産地呼称管理委員会認定」\「有田モデル認定品」\「Arida Appellation Control」∞有田QUALITY\有田市原産地呼称管理委員会 認定」、指定役務「農産物等の商品の品質の認定基準への適合性についての審査・認定又は証明」
⑨登録第5505517号商標「§The∞SAGA\佐賀県原産地呼称管理委員会認定」、指定商品「佐賀県産の日本酒,佐賀県産の洋酒,佐賀県産の果実酒,佐賀県産の酎ハイ,佐賀県産の中国酒,佐賀県産の薬味酒」
⑩商願2012-18543商標「長野県\原産地呼称\管理委員会\・認定・」、指定商品「長野県産の米 長野県産の原料を使って長野県内で製造されたワイン,日本酒,焼酎,シードル」
(當間)
2012年7月6日金曜日
パロディか、「面白い恋人」は面白いのか?
◇すこし前に、面白い恋人事件が話題となった。これは、菓子に商標「面白い恋人」を付して使用していた吉本興業等を、登録商標「白い恋人」を有する石屋製菓が商標権侵害及び不正競争防止法に基づき販売差止、廃棄を求めて訴訟を提起した事件である。現存する「シロイコイビト」の称呼を含む商標を検索したところ35件検出され、そのうち29件が権利者「石屋製菓」となっている。
◇実際の商標の使用態様は、下記URLでも確認できるが、「石屋製菓」は、「白い恋人」の文字商標だけでなく、外箱デザインや、菓子を1個ずつ包むビニルパケージ部についても商標権を取得している念の入れようである。
(http://blog.livedoor.jp/aokichanyon444/archives/53350759.html)
◇しかし、両商標は類似するのか、通常考えると、「面白い恋人」と「白い恋人」は、類似しないとなってしまうと思われる。「面白い恋人」の文字列の中に「白い恋人」が全て含まれてしまうとしても、「面白い恋人」はいわゆる同書同大で一連に書してなり、既成語「面白い」を「面」と「白い」にわざわざ分断する理由もなく、また「面」と「白い恋人」を分断する理由もないはずである。商標に他の著名商標「白い恋人」を含むとしても、「面白い恋人」を分断して考えるのは難しいであろう。また、実際の取引の実情を考慮しても出所混同のおそれが無いと判断されそうなのは、本件がパロディ事件としても騒がれたように、つまりパロディは他人が面白おかしく茶化してやるから、元々「白い恋人」とは無縁の他人による商品と考えるところにもある
であろう。
◇「面白い恋人」は本当に面白いのか?面白いと思うのは、「白い恋人」の存在が前提となり、それが実際に使用され、有名になっているからであり、そうでなければ全然面白くない。しかし、フリーライドされ利益を持って行かれたと考える「石屋製菓」はいずれにしても微塵も面白くないのである。文字商標だけでなく、文字が類似しなくともパッケージ全体として真似される「サロンパスVSロマンパス」事件のようなものを避けるため、パッケージ商標等も入念に出願してきているのに、観念、外観、称呼全て似ていないと見えるのである。このような場合、商標権では無力なのか?
◇実は吉本興業が出願した商標「面白い恋人」は、登録商標「白い恋人」が引用され、商標法4条1項11号、つまり類似の理由で拒絶理由が出されているが、最終的には同法4条1項7号の公序良俗違反で拒絶査定されているのである。この7号の公序良俗違反は伝家の宝刀とも言われ、最後の最後に困ったときに特許庁が出す拒絶手段というのであるから、特許庁も本当に困ったのかもしれない。不正競争防止法であればもう少し柔軟な対応はできるであろうが、パロディに関する明確な規定はない。
◇パロディというと著作権法がすぐ思い浮かぶが、現行著作権法にパロディの規定はなく、場合によっては、翻案権や同一性保持権等が問題となることはある。表現の自由が強く認められるとパロディが著作物として認められてくるという傾向が出てくるはずで、これは欧米の方が進んでいるようである。
◇もし、茶化し得の茶化され損で、大きな利益が絡んでくる場合等は、米国等でいわれるフェアユース(公正利用)の法理が有効なのかもしれない。米国の著作権法では、以下の要件を考慮し「フェア・ユース」か否か判断される。著作者が損をするか等については4.の要件が関係してくる。
◇現在、日本の著作権法には「フェア・ユース」の概念はないが、文化審議会著作権分科会で、日本版フェアユースが導入される方向となってきたとされ、今後の注目を集めるであろし、さらにこれが商標法に飛火しということもあり得ることである。 (當間)
◇実際の商標の使用態様は、下記URLでも確認できるが、「石屋製菓」は、「白い恋人」の文字商標だけでなく、外箱デザインや、菓子を1個ずつ包むビニルパケージ部についても商標権を取得している念の入れようである。
(http://blog.livedoor.jp/aokichanyon444/archives/53350759.html)
◇しかし、両商標は類似するのか、通常考えると、「面白い恋人」と「白い恋人」は、類似しないとなってしまうと思われる。「面白い恋人」の文字列の中に「白い恋人」が全て含まれてしまうとしても、「面白い恋人」はいわゆる同書同大で一連に書してなり、既成語「面白い」を「面」と「白い」にわざわざ分断する理由もなく、また「面」と「白い恋人」を分断する理由もないはずである。商標に他の著名商標「白い恋人」を含むとしても、「面白い恋人」を分断して考えるのは難しいであろう。また、実際の取引の実情を考慮しても出所混同のおそれが無いと判断されそうなのは、本件がパロディ事件としても騒がれたように、つまりパロディは他人が面白おかしく茶化してやるから、元々「白い恋人」とは無縁の他人による商品と考えるところにもある
であろう。
◇「面白い恋人」は本当に面白いのか?面白いと思うのは、「白い恋人」の存在が前提となり、それが実際に使用され、有名になっているからであり、そうでなければ全然面白くない。しかし、フリーライドされ利益を持って行かれたと考える「石屋製菓」はいずれにしても微塵も面白くないのである。文字商標だけでなく、文字が類似しなくともパッケージ全体として真似される「サロンパスVSロマンパス」事件のようなものを避けるため、パッケージ商標等も入念に出願してきているのに、観念、外観、称呼全て似ていないと見えるのである。このような場合、商標権では無力なのか?
◇実は吉本興業が出願した商標「面白い恋人」は、登録商標「白い恋人」が引用され、商標法4条1項11号、つまり類似の理由で拒絶理由が出されているが、最終的には同法4条1項7号の公序良俗違反で拒絶査定されているのである。この7号の公序良俗違反は伝家の宝刀とも言われ、最後の最後に困ったときに特許庁が出す拒絶手段というのであるから、特許庁も本当に困ったのかもしれない。不正競争防止法であればもう少し柔軟な対応はできるであろうが、パロディに関する明確な規定はない。
◇パロディというと著作権法がすぐ思い浮かぶが、現行著作権法にパロディの規定はなく、場合によっては、翻案権や同一性保持権等が問題となることはある。表現の自由が強く認められるとパロディが著作物として認められてくるという傾向が出てくるはずで、これは欧米の方が進んでいるようである。
◇もし、茶化し得の茶化され損で、大きな利益が絡んでくる場合等は、米国等でいわれるフェアユース(公正利用)の法理が有効なのかもしれない。米国の著作権法では、以下の要件を考慮し「フェア・ユース」か否か判断される。著作者が損をするか等については4.の要件が関係してくる。
- 利用の目的および性格(利用が商業的な性格を有するか、または非営利の教育目的であるのかということを含む)
- 著作物の性格
- 著作物全体との関連における利用された部分の量および本質性
- 著作物の潜在的な市場または価値に対して利用が与える効果
◇現在、日本の著作権法には「フェア・ユース」の概念はないが、文化審議会著作権分科会で、日本版フェアユースが導入される方向となってきたとされ、今後の注目を集めるであろし、さらにこれが商標法に飛火しということもあり得ることである。 (當間)
2012年5月31日木曜日
身の回りの知的財産権
◇大阪市の入れ墨問題が世間を賑わせている。近年では西洋文化の影響か、ファッションで入れ墨をする傾向があるようだが、日本においては、江戸時代の入墨刑や、明治初期からの非合法の扱いとなった経緯もあり、その存在に嫌悪感や恐怖感が抱かれることは致し方ないことであろう。
◇一方、日本の伝統的入れ墨は、その高い技術と芸術性から、美的価値を持つ伝統芸術であるともいわれている。彫師にしてみれば、他人の身体をカンバスにしているとはいえ、精魂を込めて施した入れ墨に高い誇りと、愛情を持っているものと思われる。
◇知的財産という視点で「入れ墨」にスポットをあててみると、珍しい判例がある。
◇自身の身体に彫られた仏像の入れ墨を、彫師に無断で自叙伝の表紙に使用して出版した執筆者男性と出版社に対して、彫師の「著作者人格権を侵害した」として損害賠償を支払うよう命じた判例である。
◇著作者人格権とは、著作者の人格を守るための3つの権利であり、著作者が未公表の作品を公表するかどうかを決定する「公表権」、作品に著作者の氏名を表示するか、どのように表示するかを決める「氏名表示権」、著作物に手を加えるなどその内容を無断で変えさせない「同一性保持権」から成立する。 今回のケースでは「氏名表示権」と「同一性保持権」の侵害が認められている。
◇執筆者男性と出版社側は、「本件入れ墨は、本件仏像写真の単なる機械的な模写又は単なる模倣にすぎず、著作物性を認めることはできない」という反論をしていた。
◇しかし、「本件入れ墨の制作過程」として、デザイン決定までの経緯や、施術過程を認定、この入れ墨は彫師の思想、感情が創作的に表現されていると評価することができるとして、彫師に著作権があるとしている。
◇事件の詳細、判決文は以下の裁判所HPへのリンクをご覧いただきたい。
第一審: http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110801165012.pdf
控訴審: http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120202170933.pdf
別紙: http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110801165453-1.pdf
◇私達の身の回りには、著作権をはじめとする知的財産権が存在している。
◇スーパーなどに貼りだされている幼児が描いたお母さんやお父さんの似顔絵。
子供が描いたアニメ・キャラクターのイラスト。
露店で売られている戦隊モノのオモチャや、アイドルのブロマイド。
アニメ・キャラクターや、美術作品をアレンジしたホームページの背景画面。
◇それらの使われ方や、権利者の背景を想像、時には追跡してみるのも、知的財産を知る良い機会かもしれない。(進藤)
◇一方、日本の伝統的入れ墨は、その高い技術と芸術性から、美的価値を持つ伝統芸術であるともいわれている。彫師にしてみれば、他人の身体をカンバスにしているとはいえ、精魂を込めて施した入れ墨に高い誇りと、愛情を持っているものと思われる。
◇知的財産という視点で「入れ墨」にスポットをあててみると、珍しい判例がある。
◇自身の身体に彫られた仏像の入れ墨を、彫師に無断で自叙伝の表紙に使用して出版した執筆者男性と出版社に対して、彫師の「著作者人格権を侵害した」として損害賠償を支払うよう命じた判例である。
◇著作者人格権とは、著作者の人格を守るための3つの権利であり、著作者が未公表の作品を公表するかどうかを決定する「公表権」、作品に著作者の氏名を表示するか、どのように表示するかを決める「氏名表示権」、著作物に手を加えるなどその内容を無断で変えさせない「同一性保持権」から成立する。 今回のケースでは「氏名表示権」と「同一性保持権」の侵害が認められている。
◇執筆者男性と出版社側は、「本件入れ墨は、本件仏像写真の単なる機械的な模写又は単なる模倣にすぎず、著作物性を認めることはできない」という反論をしていた。
◇しかし、「本件入れ墨の制作過程」として、デザイン決定までの経緯や、施術過程を認定、この入れ墨は彫師の思想、感情が創作的に表現されていると評価することができるとして、彫師に著作権があるとしている。
◇事件の詳細、判決文は以下の裁判所HPへのリンクをご覧いただきたい。
第一審: http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110801165012.pdf
控訴審: http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120202170933.pdf
別紙: http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110801165453-1.pdf
◇私達の身の回りには、著作権をはじめとする知的財産権が存在している。
◇スーパーなどに貼りだされている幼児が描いたお母さんやお父さんの似顔絵。
子供が描いたアニメ・キャラクターのイラスト。
露店で売られている戦隊モノのオモチャや、アイドルのブロマイド。
アニメ・キャラクターや、美術作品をアレンジしたホームページの背景画面。
◇それらの使われ方や、権利者の背景を想像、時には追跡してみるのも、知的財産を知る良い機会かもしれない。(進藤)
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