2013年2月25日月曜日

日本公認不正検査士協会(ACFE JAPAN)「知的財産法 基礎的理解と不正事例の研究/会社を守るために今必要なこと」を受講して

◇先週火曜日、前記テーマでのセミナーを受講した。同協会の性格上、通常、そのセミナー内容は不正対策に関連したものとなってくるが、今回は不正と知的財産法のコラボレーションとなっている。

◇今回講師の久保次三教授は、日産の久保さんの時代から知財業界でよく知られていたが、世界知的所有権機関(WIPO)のコンサルタントを始めた時には皆驚かされ、また、鹿児島大学へ教授として赴任した時には突如東京から消え去り皆驚かされ、5年経って再び東京に現れた時には専修大学の教授になっていた。その都度、面白い話題を提供してくれていたが、今回もそれに違わず面白いセミナー内容のご提供をいただいた。
不正と知的財産法のコラボ、これに対峙したものは中々いないであろうが、今回久保教授の用意した内容は、職務発明と営業秘密の事例を中心としたもので、多くの問題点が提起され、注目を集めているところでもある。

◇初めの40分ほどで知的財産法を概観し、とはいっても、特許法、実用新案法、意匠法、商標法、種苗法、著作権法、半導体チップ法、不正競争防止法等、セミナーという時間的制限の中では、後の理解に役立つ体系的理解のための多くの図表を参照し、ポイントとなる点を説明いただいた。
最初に、物と情報の比較で、「物→所有権→占有・所有」、「情報→財産権→専有・保有」との説明は、知的財産全般に通ずる性質だけでなく、本題の営業秘密等にも通ずる自由に拡散し得る宿命的な知的財産の性質を示唆したものともみえた。

◇本題となる「職務発明をめぐる特許を受ける権利の帰属と営業秘密の保護」では、「バリ取りホルダー(加工工具)事件(東京地判平21.1.29、知財高判平22.2.24、最決平22.9.24(上告棄却・上告不受理))」を取り上げ、所感も交え、重要ポイントを説明いただいた。
平成17年4月1日施行の改正特許法35条(職務発明)については、1項「法定通常実施権」変更なし、2項「予約承継」実質的な変更なし、3項「相当の対価の支払」実質的な変更なし、4項「不合理な対価でないこと」新設、5項「使用者の貢献度等」新設、旧4項に相当というポイントが明示され今物議を醸し出している35条の条文が掲載されている。

◇特許法35条の改正は、テキストで取上げられた「オリンパス光学事件(最三小判平15.4.22)の判決を契機として産業界から改正を要望する声が上がったとされている。
久保教授がセミナー中に触れていた「青色発光ダイオード」の事件については、日亜化学工業に勤務していた中村修二氏の報奨金はわずか2万円で、同社退職後、カリフォルニア大教授の中村氏は同社に対し、発明の対価の一部として200億円の支払いを求めていた裁判の控訴審で平成17年1月11日、中村教授と同社との和解が東京高裁で成立し、同社が中村教授に8億4391万円を支払うこととなり大きな話題となった事件である。
この頃、技術者たちが特許法35条に基づき、退職前の会社を訴えるケースが多発してきていたわけで、在職中は不満を抑えて、退職後に訴訟を提起するというかたちになっている。
このような事件の影響もあり、特許の報酬が少なく、発明した技術者が報われる制度をということで、改正された特許法35条であるが、これにより、職務発明にかかわるリスクが会社経営に大きな影響を与えるという認識がトップに芽生えてきたという話も聞かれる。
しかし、この改正特許法35条も産業界の要望に応えていないなど、経団連からも再改定の声があがってきているということである。

◇営業秘密については、久保教授もテキスト所感において、「(前の職場での)残留知識を闇雲に単に使わせず埋もれさせることは、社会全体の進歩に害をもたらすことにもなろう。だからといって、前の職場が多大の時間・コストを掛けて修得させた知識・経験が、そのままライバル会社で使用されることを座視するわけにもいかない。」と述べ、「会社としては、退職者、そして、中途採用者の双方のことをバランスよく考えれば、最早「情報は必ず漏れるもの」という意識で取り組むしかない時代が到来したということかもしれない。言い過ぎかもしれないが、情報の本質を考えると悩ましい。」と述べている。
考えてみれば、特殊で高度な技術を持った者であれば尚更、退職した場合に同業他社であるライバル会社へ行く可能性が高くなっていく。終身雇用制が崩れ出し、人の入れ替わりが激しくなってくると、この問題も今後更に顕在化してくるのではないか。

◇セミナー全体での論点を含んだ重要ポイントを全て紹介するわけにもいかず、ここでは、一部を紹介するに止まるが、会社関係者は、関連する法令の理解だけでなく、法律の規制だけで解決されない部分にも注意を行き届かせる細心のリスク管理が今後益々必要となってくるであろうと感じたところである。

◇セミナー終了後には、法務部、知財部や特許事務所弁理士の数名の方々から、メール等で、セミナーが大変役立った等の内容でのお礼の言葉が届き、本当に良かったと思えたのであるが、今後は、知財関係部署も一体となって不正・リスク管理に取り組むことも必要となるのかもしれない。
(當間)