2011年6月20日月曜日

知的財産とリスク管理、コンプライアンスの問題

◇知的所有権、無体財産権などとも呼ばれてきた権利については、最近では、知的財産権とよばれることが多い。所有権の保護対象は有形の有体物であるが、無体物を保護するのに知的所有権ではおかしいという学説、見解も出現するなどした経緯もあるが、この無形の無体物を保護するという点で、多くの問題が生ずるに至っている。

◇まず、知的財産権の種類と、それを保護する法;保護対象(カッコ内に記載)については、特許庁所管で産業財産権ともよばれる特許権(特許法;発明)、実用新案権(実用新案法;考案)、意匠権(意匠法;意匠)、商標権(商標法;商標)があり、その他にも、著作権(著作権法;著作物)、回路配置利用権(半導体集積回路の回路配置に関する法律;半導体集積回路の回路配置)、育成者権(種苗法;植物の新品種)、営業秘密(不正競争防止法;営業秘密・ノウハウ)、商号(商法;商号)、商品表示・商品形態(不正競争防止法;商品表示・商品形態)などがある。

◇これら知的財産の特徴は、無体の情報がもとになって作り上げられたものであり、所有物のように金庫に入れておけば安心という財産ではない。その無体の情報は、流出し易いものであり、また模倣も容易に行える。そして、これらは、無形で把握するのが難しいという点でリスク増大の要因ともなり得る。

◇職務発明について、青色発光ダイオード特許対価事件で、東京地裁で200億円(地裁の算定は約604億3000万円)の判決が出て、企業関係者に大きな衝撃を与えた。その後、東京高裁で被告会社が原告に6億857万円(利息を加えると8億4391万円)を支払うことで和解が成立している。この事件は、大きな注目を集めたが、その後の職務発明の在り方や、企業のリスク管理の在り方などにも大きな影響を与えている。

◇それとはまた別の観点で企業ノウハウについて見てみると、世界的に有名な某飲料メーカーでは、その製造方法を特許として出願しておらず、云わば社内ノウハウとして秘蔵しているのである。こんなことが可能か、またそのメリットはというと、次のようなことが考えられる。同社は、原液の秘密を社長と顧問弁護士の二人のみが知っており、世界各地では原液の配給を受けてボトリングしているだけであるといわれているが、その製造工程も無数(100工程位か?)に分け、途中の作業員が数人同業他社に引き抜かれても、その全貌は全く分からないようにしているとも聞く。この管理方法によりほぼ永久にノウハウが独占できるわけであるが、特許出願をしていれば、もう特許権も切れて誰でも自由に実施ができるようになっているはずであり、同社の今日の栄華、世界的成功はなかったかもしれない。

◇ここに2つの特徴的事例をみてみた。無形で把握が難しい知的財産であるが、それをきちんと把握し、リスク管理を行い、コンプライアンスに対処することは、今や企業にとっては避けては通れない重要な課題となっており、企業成功の大きなカギを握っていることに間違いはないであろう。 (當間)