◇1月31日付で、「喜多方ラーメン」の地域団体商標登録を認めるよう求めた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷はそれを退ける決定をし、知財高裁判決が確定した。
◇本願商標は、福島県喜多方市の「喜多方」の地名と役務の普通名称「ラーメン(の提供)」との組合せにかかる典型的な地域団体商標の態様で出願されている。本願が登録を認められなかった理由は、出願人である協同組合「蔵のまち喜多方老麺(らーめん)会」への市内のラーメン店の加入率が低く、「喜多方ラーメン」の名称を長年使用する市外のチェーン店があることなどから、名称が組合だけのものと広く認識されているとはいえないということ等にある。
◇このような地理的表示については、本来、その地域での共有財産的性格をもち、一個人の独占に適さないという性格をもつが、一定の条件を充たす場合に商標法での保護が可能となっている。
◇もともと一般に考えられる商標というのは、一個人に独占排他権という商標権を与え、公正な競業秩序を維持しなどとする制度となっている。地域団体商標制度のような特殊な制度導入がないと、その地域での共有財産のような表示は、拒絶理由とするしかないものである。
◇個人ブランド、企業ブランドのような旧来から存在する商標を考えると、「地域名+商品(役務)名」による文字商標は「識別力を欠く、識別力が弱い・薄い」などとして、商標登録を原則は認めておらず(商標法3条1項3号)、一個人の独占には適さない。しかし、これが地域ブランドのようになってくると、一定の要件のもとに登録を認めた方が地域や国の利益にも繋がる場合が出てくる。地域団体商標制度は、地域産業の活性化や振興、地場産業の発展、地域おこしなどの重要性が認識され、産地偽装等の問題が顕在化するような中で、産業政策的見地から導入されている(同法7条の2)。
◇地域団体商標は、事業協同組合等が出願人となり、その組合等の地域団体構成員に使用させたりするが、今般の「喜多方ラーメン」事件では、協同組合「蔵のまち喜多方老麺(らーめん)会」が出願人となり、その組合員である喜多方老麺会加入の43~44店舗(現在HPでは45店舗( http://www.ramenkai.com/shop/list.php )だが、Copyright 2005で更新していないのか)に商標を使用させようとするものであった。これに加入しているのは、喜多方市内のラーメン店のうち47%ないし59%というのが判決では問題となっているし、全国的に知られている有力な喜多方市内のラーメン店が加入していないこととなる旨も述べている。また、「喜多方ラーメン」の表示の付くラーメン店は、喜多方市を除いて全国的にかなりの数存在する。したがって、名称が組合だけのものと広く認識されているとはいえないとする部分に結びついていく。
◇これを、地域団体商標も有名になりすぎるとだめだと云う声も幾つか聞こえてきたが、それだけでは正確ではないと思われる。地域団体商標の登録要件の一つに「商標が使用の実績により出願人である団体又はその構成員の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして周知となっている場合に登録を認める。」としているのであるから、問題は、有名になった場合の管理の仕方にもあると思われる。
◇どこかで似たような話がと思われるかもしれないが、「登録商標の普通名称化」という一つの論点がある。「うどんすき」という美々卯の登録商標(商標登録第553621号)は裁判で普通名称化したと判断されている。「エスカレータ」は米オーチス社の登録商標だったが1950年に権利を放棄している。「ホッチキス」はイトーキの登録商標だったが商標権が消滅し普通名称になった等々の問題である。
◇「喜多方ラーメン」もすでに、喜多方という一地域を離れて、全国的ブランドとして広く認識されていたのであろうか。
◇普通名称化の場合は、その登録商標の管理をきちんと行い、自社の登録商標である等の表示を付したり、他社が勝手にどんどん使ってしまわないようにすることが、回避する手段として重要とされたりする。「喜多方ラーメン」の場合も他の地域で勝手に使用されないように管理していれば良かったのであろうか。
◇そこでもし、地域団体商標「喜多方ラーメン」の登録が認められていたら、今後どのようになっていったのか。当該組合以外の全国の非加盟店が、おそらくしばらくは先使用権のようなもので「喜多方ラーメン」の表示で営業を続けられるかもしれないが、拡張できないまま、やがては全国の非加盟店の看板から「喜多方ラーメン」の表示が消えていくことになったのではないか。
◇このような状況下で、今般の最高裁までいった本事件は終結を迎えたわけであるが、幾つかの問題点が浮き彫りとなった事件でもあった。(當間)