◇ニース協定に基づく国際分類第10版が平成24年1月1日より発効し、それに対応した類似商品・役務審査基準の大改訂が行われた。
◇これにかかわる説明会等はこれまで各所で開催されてきているが、昨年12月には日本商標協会の2つの部会と関西支部の主催で、特許庁商標審査基準室長等を講師に招いて東京と大阪で開催された。会場は、当初予定より参加者が大幅に増加し、会場を拡張しての開催であったが、弁理士等商標実務家や大学教授などの顔ぶれもありその関心の高さが窺えた。類似商品・役務審査基準については、これまで5年に一度の大改訂が行われてきているが、これからは、これをマイナーチェンジで1年に一度とするとの説明会講師からの発言もあった。グローバル化加速で5年に一度程度では追いつかなくなってきているのかもしれない。
◇何はともあれ「類似商品・役務審査基準」は、商標実務家にとってはバイブルのようなものになっている。これがないと商標の調査も出来ないし、商標の出願もできない。
◇マークだけでは商標といわず、マークを商品・役務(サービス)に付して使用することで商標という概念を導いている。ここでいうマーク(mark)は、商標法では標章とよばれ、使わないものを含むということで、商標(trademark)より広い概念となっている。因みに、防護標章といい防護商標といわないのは使用しないことを前提としているからでもある。
◇商標(trademark)の同一・類似については、標章(mark)の同一・類似だけでなく、商品・役務(goods/services)の同一・類似との掛け合わせでできる4つのマトリックス図でよく説明されたりする。
◇この類似の概念は、ある意味、一般的に出所の混同を生ずる範囲と擬制しているともいえ、画一的な処理、手続きの迅速化、予見可能性を高めるということで有効である。行政という特許庁の手続レベルでは、やはり「類似商品・役務審査基準」はバイブルともいえる大事な役目を背負っているのである。しかし、この審査基準に類似群コードで示された商品・役務群は、類似と推定されると記されているように、当然絶対的なものではなく、審判や訴訟という上級審では反証により覆る可能性があるのである。
◇例えば、国際分類の第12類の「自動車並びにその部品及び附属品」と第13類の「戦車」は、何れも類似群コード12A05であり、審査実務上で類似の商品と推定されるであろう。しかし、第12類の4輪乗用車は、T社、N社、H社等の工場で生産され、各販売店等を通じ、エンドユーザーである一般家庭のお父さんたちの手に渡ったりする。これに対し、第13類の戦車はM重工などの特殊な生産工場で生産されるのであろうが、外国製戦車は商社が間で介入するとして、そのエンドユーザーはJ隊などであろうか。製造、流通ルート、エンドユーザー等どれをとっても出所の混同を生ずる場面が考えにくいはずである。これなど、特許庁で商品が類似とされ拒絶されたとしても、審判、訴訟の上級審で覆り、類似しないとされるかもしれない。
◇商標(商標という場合markとtrademarkの両方の意味で使われたりするが、ここではmarkの意味)の類似については、多くの論文、著作等がある。しかし、商品・役務の類似についてはそれも非常に少なく、ある意味大変難しい議論が山積みされているともいえる。有名な判決としては、「橘正宗事件(昭和33年(オ)第1104号 審決取消請求事件 昭和36年6月27日 最高裁判所第三小法廷)」があるが、清酒と焼酎の類似にも言及した判決でもある。(當間)