◇知財関係者で最早知らない人はいないであろう。発明家や倒産企業から特許を安価で買い漁り、その特許を侵害している疑いのある企業を見つけ出しては、訴訟や交渉を繰り返し、巨額な賠償金や和解金、または、ライセンス料をせしめることをしのぎとしている個人や集団を蔑称して「パテント・トロール」、またの名を「特許ゴロ」と呼ぶ。
ちなみにトロールとは、奇怪な妖精や怪物のことで、ゴロは「ゴロツキ」のゴロである。
◇当然、特許権の行使をすること自体に何の問題もないのだが、所謂、パテント・トロールと言われる個人や集団は、特許権を保有しているだけで、自ら特許を実施した製品を製造したり販売しているわけではなく、和解金やライセンス料をせしめることだけを目的にしているところが、パテント・トロールや特許ゴロなどと言われて恐れられている所以だ。
◇特に米国では、投資家から集めた資金で特許を買い集め、特許侵害で得られた賠償金や和解金、またはライセンス料金を投資家に分配するという商売をしているトロール集団が既に200社以上存在することが確認されている。
◇これら米国に実在するトロールの具体的なスキームはこんな感じだ。
まず、米国では訴えられた側が、特許権を侵害していないことを立証しなければならず、立証には膨大な関係資料を膨大な時間と工数をかけて準備しなければならない。いくら勝訴する自信があったとしても、億単位の費用がかかる為、頭を悩ませながら対策を検討していると、タイミングを見計ったかの様にトロール側は和解提案書を送り付けて来る。
今後の訴訟費用のことや、米国の陪審員制度等により判決が予想し難いことを考えて、企業(被告側)の経営判断として和解に応じざるを得ないことをトロール側は計算しつくしているのである。
◇厄介なことにトロール側は製品を製造・販売していないので、落度を見つけて逆に訴訟を起こしたり、特許のクロスライセンス契約をすることも出来ず、また、トロール行為以外に何か特定のサービスやビジネスをしているわけではないので、手の出しようがない。せいぜい、特許無効を申し立てたり、侵害していないことを主張したりするしか手が無いのである。
◇米国では、既にパテント・トロール対策会社が存在するぐらい、深刻な状況になっている。
幸いにして現在のところ、日本企業が大きな被害にあったという話は聞かれてないが、そろそろ日本も対岸の火事では、いられない時期に近付いているのでは無いだろうか。現に、私の知っている特許事務所の方にも、パテント・トロールに関係する相談が日本企業から寄せられているという。まずは、今後、被害に遭うことを想定して、確りとした企業方針を打ち立てるなどの、対応策を検討しておくべきであろう。(山本)